川根茶を産む技術

恵まれた自然だけでは
上質な茶は育たない

茶葉が育つ風土の恩恵、それだけでは美味しい川根茶は生まれません。先代から手間暇惜しまず切磋琢磨して造り上げられた茶園は、代々受け継がれ元気な茶樹を育む土壌となり、良質な茶葉を芽ぐみます。

川根地方は山岳部のため、広大な土地に茶園を造り大型機械で1度に大量の茶葉を収穫できるところではありません。そのため昔から高品質な茶葉を作ろうと努力してきました。

農薬や化学肥料に頼らない自然の力を利用した「茶草場農法」は、正常な生態系を生みだし、動植物も虫もみんな元気になります。「芽重型」は、茶樹の葉を少なくして新しい芽に栄養をたくさん含ませる農作方法です。

自然の恵みと先人からの知恵や努力の賜物が、安心安全な「美味しい川根茶」の秘密なんです。

浅蒸し

日本緑茶は、摘み取った直後に蒸すことにより、酵素の働きを止め、酸化・発酵作用を抑えます。この高温の蒸気で蒸らす時間の長さを「浅蒸し」「中蒸し」「深蒸し」と呼んでいます。

川根茶は、昼夜の寒暖差が大きいことから香りの強い茶葉が育ち、山霧や川霧の影響で薄く柔らかい茶葉の特徴を活かした「浅蒸し」が主流となっています。茶葉の繊維を壊さず、茶葉本来の風味を引き出して、上品な甘みとほど良い渋みを持ったお茶になります。

川根揉切流

高温で蒸された茶葉は、揉みながら少しずつ水分をとばしていく行程に入ります。江戸時代から茶産地の茶葉に合わせた「手もみ製法」が研究され、たくさんの流派ができ、今も継承されています。

川根茶は、明治から大正時代に川根本町藤川の中村光四郎翁が、川根産茶葉の特徴を活かした「川根揉み切流」を伝承し、後世へ受け継がれ、葉振い・回転揉み・揉み切・転送揉み・こくり、などいくつもの技術を元に製茶工場にあるコンピュータ制御された製茶機械にも実用されています。

こだわりの茶―心技体

川根茶葉でも、栽培された場所・収穫時期や品種の特徴によって違った個性をもっています。

「香り」「甘み」「旨味」「渋味」「苦味」のバランスを取りながら、茶を仕上げていく製茶の職人「茶匠」の技も、美味しいお茶をつくるためには欠かせません。

気温や雨量など自然と向き合い、肥料の種類や量を精選し、茶樹の生育、収穫時期を見極め、1年かけて大事に育て、1葉1葉知り尽くした「茶匠」と呼ばれる高い技術をもった茶農家だからこそできる技なのです。

美味しい川根茶ができるまで

  1. 生茶葉摘み取りの写真
    生茶葉摘み取り
    摘採した茶葉は、発酵を避けるためにできるだけ早く茶工場へ運びます。
  2. 蒸し(蒸熱)の写真
    蒸し(蒸熱)
    生茶葉に蒸気をあてて、蒸らします。
  3. 冷却の写真
    冷却
    茶葉の表面の水分を取り除きます。
  4. 粗揉(そじゅう)の写真
    粗揉(そじゅう)
    熱風を当て揉みながら、水分を飛ばします。
  5. 揉捻(そねん)の写真
    揉捻(そねん)
    葉の繊維や組織を柔らかくし、茶葉を均一にします。
  6. 中揉(ちゅうじゅう)の写真
    中揉(ちゅうじゅう)
    再度揉みながら熱風をあて、水分を飛ばします。
  7. 精揉(せいじゅう)の写真
    精揉(せいじゅう)
    形を整えながら乾かします。
  8. 乾燥の写真
    乾燥
    茶葉の水分量を均一にします。
  9. 仕上げの写真
    仕上げ
    茶葉を分別して、熱を加えて乾燥させて、小袋に詰めて製品になります。

未来への挑戦

高品質のお茶をつくるプライド

山岳地である川根茶産地は、平坦地に比べ茶葉の収穫量が少なく摘採時期も遅いので、市場での価格競争では不利になることが多く、そのために品質重視の茶葉の生産に努め、自家茶園で育てた茶葉の手摘み手揉みを主体とした製茶や、自家製造機械による自園・自製で差別化を図り、品評会では数々の賞を受賞するなど「高級茶」としての地位を築き上げました。

古くから培われてきた高い技術を、収穫の効率化やコンピューター化された製茶機械により高品質な茶葉を保ちながら生産能力をあげることで、知名度があがりたくさんの人が「川根茶」を飲むようになった今でも、川根茶生産に係わる人々は、教え合い、競い合い、高め合い、更なる品質向上や技術向上に励んでいます。

高品質のお茶をつくる使命感

山間部や斜面にある茶園では、大型機械の乗り入れができないため長時間歩いたり重い茶葉を担いで運んだりかなりの重労働になります。茶農家の高齢化や少子化もあり、茶畑面積も減少傾向にありますが、どんな苦労も「『川根茶は美味しい』の一言で報われる」と言う茶農家は少なくありません。

収穫時期には、家族で近所で町全体で手伝い励まし合って「川根茶」を支えています。

川根本町農林センターでは、新優良品種の育種や栽培技術、実証実験を行い、農業後継者の研修など、地域産業振興も進んでいます。

新たな川根茶のブランド

  • 川根紅茶の写真

    川根紅茶

    川根で栽培摘採された茶品種「紅富貴(べにふうき)」を主体とした生茶葉を発酵させてつくる紅茶茶葉は、長年培われた製茶技術で、香り高く甘みのある川根紅茶として、近年人気を博しています。

  • 釜炒り茶の写真

    釜炒り茶

    摘み取った生茶葉を、釜で炒って発酵を止めてつくるのが釜炒り茶です。新しい茶品種の「香駿」「おくひかり」「山の息吹」など香り高い茶葉の特徴を活かした製茶方法も研究されています。

    爽やかな香り、花やフルーツのような甘い香りを含んだ風味も、「川根茶」ならではの美味しいお茶になります。

茶茗館

平成6年にオープンした「フォーレなかかわね茶茗館」は、川根茶の歴史や知識を紹介し、地元茶農家が栽培した「川根茶」が飲める施設です。

定期的に茶手揉保存会による「川根揉み切流」の実演体験ができるイベントなど開催されて、多くの観光客で賑わっています。

併設する「緑のたまてばこ」で川根茶や旬の地場産品を購入することができます。

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